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第6章 所有接続詞,所有形容詞,場所の表現

6.1.所有接続詞の用法

所有接続詞 -a は「〜の」という所有を表す接続詞の働きをする.これは語と語をつなぐ接続詞として使われるが,他の接続詞とは違って人称接辞から派生した語である.この語の前後にはかならず名詞相当の語をともない,名詞の類にあわせて所有接続詞も変化させる.この語が接辞として使われることはなく,品詞としては接続詞以外の用法はない.
語順は「名詞1+ -a +名詞2」となり,意味は「名詞2の(所有する)名詞1」となる.そして名詞1の人称にあわせて,所有接続詞の人称(語頭の音)が決定される.
mtu wa kawaida「普通の人」,wanyama wa pwani「海辺の動物」,
mkate wa mahindi「とうもろこしのパン」,mizizi ya mipunga「稲の根」,
saa ya mkono「腕(の)時計」,mbegu za matunda「くだものの種」,
kilimo cha kijiji「村の農業」,Visiwa vya Ujapani「日本列島(日本の島々)」,
jengo la jiwe「石の建物」,maziwa ya manazi「ココナツのミルク」,
ukuta wa chuma「鉄の壁」,mahali pa heshima 「貴賓席(名誉の場所)」,
mahali kwa uhuru「自由の土地」,mahali mwa weusi「暗いところ(暗闇の場所)」
スワヒリ語ではこの種の表現が多用され,さまざまなものに使われる.
-a kushoto「左の」,-a kulia(kuume)「右の」,-a juu「上の,上等な」,
-a chini「下の,下等な」,-a ndani「中の,中等の」,-a nje「外の,外国の」,
-a kike「女の,メスの」,-a kiume「男の,オスの」,
-a kwanza(mwanza)「最初の」,-a mwisho「最後の」,-a pekee「それ特有の」
shule ya msingi「小学校」,shule ya sekondari「中学校」,hali ya hewa「天気」,
wizara ya biashara「商務省」,chama cha demokrasi「民主党」,
ubaguzi wa rangi「人種差別」,sanduku la posta「郵便箱,私書箱」,
majira ya joto「暑い季節,夏」,makamu wa rais「副大統領」,
herufi za Braille「点字」,herufi za Kichina「漢字」,lugha ya alama「手話」,
gari ya moshi(garimoshi と1語にしていうことが多い)「汽車,列車」,
maji ya moto(maji moto ということが多い)「熱湯,湯」,
Afrika ya Mashariki(Afrika Mashariki ということが多い)「東アフリカ」
Nataka maji ya mananasi.「私はパイナップルジュースが欲しい.」
Chama cha elimu kinajenga shule za sekondari.「教育委員会は中学校を建てる.」
なお,所有を表す -a +名詞 の働きを「所有格」と呼び,主語や目的語を表す語(名詞相当語)の働きと対比させてこれらと同じように扱う.「格」とは,文の中で語(名詞相当語)がどんな役割をはたしているかを示す用語で,主語や目的語に相当する格をそれぞれ「主格」,「目的格」という.

6.2.所有接続詞 pa, kwa, mwa の用法

第Z類名詞の所有接続詞 pa, kwa, mwa には他の類にはみられない特別な用法がある.これらは名詞 mahali「場所」をともなわずに,使うことができる.また,場所だけでなく時間をさすこともある.
Anaketi pa heshima.「彼は貴賓席にすわってる.」
Nitazuru kwa marafiki.「私は友だちのところをたずねる.」
Anafikiri mwa siku ya leo.「彼はきょう一日考えごとをしている.」
kwa は特に,「〜のところで」という意味から発展してさまざまな用法がある.その中には慣用的な表現になっているものも多い.
◇「〜のところで」から転じて「〜の家で」を表す.
kwa mwanachama「委員の家で」,kwa Hamisi「ハミシのところで」
Tunaenda kwa Juma.「私たちはジュマの家へ行く.」
◇「〜を使って,〜で」のような意味を持つ.
kwa miguu「足を使って,歩いて」,kwa mikono「手を使って,手で」
Wahindi wanakula chakula kwa mikono? 「インド人は手を使って食事するの?」
◇ 理由に関する語などをともなって「〜というわけで」の意味を表す.この後ろには普通の文が続くことができる.
kwa sababu「〜という理由で」,kwa kuwa「〜ということで,〜というわけで」
Garimoshi inachelewa kwa sababu theluji inanyesha.
「雪が降ってるので列車が遅れる.」
◇ 状況,状態を表す語を後ろにおいて動詞や文を修飾する語句を作る.
kwa haraka「急いで」,kwa hakika「はっきりと,確信して」
Ninakunywa maji ya dawa kwa haraka.「私は急いで飲み薬を飲む.」
◇ この他にもいろいろな用法がある.
kwa Krismasi「クリスマスにあたって」,wanawake kwa wanaume「女性対男性」,
zawadi kwa wazazi「両親へのプレゼント」,kwa heri「さようなら」,
kwa mfano「たとえば」,kwa moyo「心に,心から」
6.3.所有形容詞

1人称,2人称,3人称の代名詞に対する所有格(「私の」「あなたの」「彼の」など)は,所有接続詞 -a「〜の」を用いないで特別な品詞(語)を用いる.この語は「所有接続詞+代名詞」に相当する意味を持つので,これを所有形容詞(所有格を表す形容詞)という.形容詞とは「状態」や「状況」を表す語をいい,おもに名詞(名詞相当語句)を修飾,限定する働きをする.所有形容詞は名詞を限定する役割を持つために,品詞としては「形容詞」の中に含める.所有形容詞には,それぞれの人称(1人称,2人称,3人称)と数(単数,複数)に応じた形がある.
所有形容詞は名詞の後ろにおかれて,その名詞の所有者を示す.そのとき,前におかれた名詞の人称に応じて変化をする.その変化のようすは所有接続詞の変化と共通している.形はだいたい所有接続詞 -a に,それぞれ -angu(1人称単数),-etu(1人称複数),-ako(2人称単数),-enu(2人称複数),-ake(3人称単数),-ao(3人称複数)をつけた形に近い.たとえば第I類単数に対応する所有形容詞を例にとると,wangu(<*wa- angu)「私の」,wetu(<*wa-etu)「私たちの」,wako(<*wa-ako)「あなたの」, wenu(<*wa-enu)「あなたたちの」,wake(<*wa-ake)「彼(女)の」,wao(<*wa- ao)「彼(女)たちの」となる.1人称と2人称の複数で,母音 a が母音 e に変化しているが,これはスワヒリ語によくみられる *ae > e という母音変化のためである.
各類の変化をまとめると次のようになる.
名詞接辞
(名詞例)



1人称 2人称 3人称
単数
私の
複数
私た
単数
あな
複数
あな
たち
単数
彼(女
複数
彼(女
たち
第T類 m mtu wa wangu wetu wako wenu wake wao
wa watu wa wangu wetu wako wenu wake wao
第U類 m mti wa wangu wetu wako wenu wake wao
mi miti ya yangu yetu yako yenu yake yao
第V類 ny nyota ya yangu yetu yako yenu yake yao
ny nyota za zangu zetu zako zenu zake zao
第W類 ki kitu cha changu chetu chako chenu chake chao
vi vitu vya vyangu vyetu vyako vyenu vyake vyao
第X類 ji jiwe la langu letu lako lenu lake lao
ma mawe ya yangu yetu yako yenu yake yao
第Y類 u utu wa wangu wetu wako wenu wake wao
第Z類 pa mahali pa pangu petu pako penu pake pao
ku mahali kwa kwangu kwetu kwako kwenu kwake kwao
m mahali mwa mwangu mwetu mwako mwenu mwake mwao
所有形容詞は単独で名詞の所有者を表す.
mwalimu wangu「私の先生」,wazazi wako「あなたの両親」,mshahara wake「彼の給料」,mikono yetu「私たちの手」,gari yenu「あなたたちの車」,nguo zao「彼女たちの服」,
kinywa changu「私の口」,viatu vyenu「あなたたちのくつ」,jiko lake「彼女の台所」,majirani yetu「私たちの近所」,umri wako「あなたの年齢」,mahali pao「彼らの場所」
また,その後ろに所有者の名詞(代名詞)を補うこともできる.
mifugo yangu mimi「私の家畜」,sahihi yako wewe「あなたの署名」,
kibanda chake Fatima「ファティマの小屋」,makosa yetu sisi「私たちの間違い」,
urafiki wenu ninyi「あなたたちの友情」,mahali kwao Waafrika「アフリカ人の場所」
peke「〜だけ」を修飾する場合には,次のようにやや不規則になる.1人称から3人称の代名詞に対してはそれぞれの所有形容詞が使われるが,名詞に対しては,第T類を除いてはすべて単数扱いになる.
mimi peke yangu「私だけ」, sisi peke yetu 「私たちだけ」
wewe peke yako 「あなただけ」, ninyi peke yenu「あなたたちだけ」
yeye peke yake 「彼(女)だけ」,wao peke yao 「彼(女)たちだけ」
mtu peke yake 「人間だけ」, watu peke yao 「人間たちだけ」
mti peke yake 「木だけ」, miti peke yake 「木(複数)だけ」
nyota peke yake「星(単数)だけ」, nyota peke yake「星(複数)だけ」
kitu peke yake 「もの(単数)だけ」,vitu peke yake 「もの(複数)だけ」
jiwe peke yake 「石(単数)だけ」, mawe peke yake 「石(複数)だけ」
utu peke yake 「人間性だけ」, mahali peke yake「場所だけ」

6.4.「人・動物」を表す名詞の所有形容詞

名詞が「人・動物」を意味するときは,その名詞の属する名詞類にかかわらず,第T類に準じた特殊な変化をする.所有接続詞(所有詞)は,「人・動物」を意味する名詞に対しては第I類の変化形だけを用いる.所有形容詞についても,第I類に変化させることが多いが,第V類と第X類については,例外的に第V類の形容詞接辞をつけるのが一般的である.1人称単数の所有形容詞 -angu「私の」を例にとってそれらをまとめると次のようになる.
名詞
接辞
人を意味する名詞 動物を意味する名詞
名 詞 例 所 有
接続詞
所 有
形容詞
名 詞 例 所 有
接続詞
所 有
形容詞
第U類
m mungu
wa wangu

wa miungu
神々
wa wangu
第V類
ny ndugu (単数)
きょうだい
wa yangu,
wangu
mbuzi
やぎ(単数
wa wangu

ny ndugu (複数)
きょうだい
wa zangu,
wangu
mbuzi
やぎ(複数
wa zangu,
wangu
第W類
ki kijana
若者
wa wangu kiboko
カバ(単数
wa wangu

vi vijana
若者たち
wa wangu viboko
カバ(複数
wa wangu
第X類
ji jitu
巨人
wa yangu,
wangu
dege
巨鳥(単数
wa wangu

ma majitu
巨人たち
wa zangu,
wangu
madege
巨鳥(複数
wa zangu,
wangu
これらの例で,所有形容詞が2つ並んでいるところでは,上の方がより標準的な形とされている.そのため,ndugu yangu「私のきょうだい(単数)」の方が ndugu wangu(私のきょうだい(単数)」よりも正式な言い方といえる.
この規則は一見複雑そうだが,原則的には人や動物を表す名詞を他から区別し,そして単数と複数が同じ形の名詞類(第V類)に対しては,所有形容詞の形態で区別しようとするものである.
Mungu wangu 「私の神」, miungu wako 「あなたの神々」,
rafiki yake 「彼の友だち」,marafiki zetu「私たちの友だち」,
ng'ombe wenu「あなたたちの牛」,ng'ombe zao「彼らの牛(複数)」,
kijana wangu「私の若者」, vijana wako 「あなたの若者たち」,
kidege wake 「彼の小鳥」, videge wetu 「私たちの小鳥」,
jitu yenu 「あなたたちの巨人」,majitu zao 「彼らの巨人」
dege wangu 「私の大きい鳥」, madege zako「あなたの大きい鳥」
しかし,かならずしもこのような規則が徹底しているわけではない.会話体の文ではどの場合でも第T類の名詞に準じて,所有形容詞を使ってかまわない.
人を表す名詞では,第I類に準じた変化形を使うと,第V類の変化形よりも主観的な所有関係を意味することがある.ただし,このような使いわけは個人によって差があり,完全なものではない.
rafiki yangu「私の(普通の)友人」, marafiki zangu「私の(普通の)友人たち」
rafiki wangu「私の(親しい)友人」, marafiki wangu「私の(親しい)友人たち」
第W類と第X類の「人・動物」を表す名詞に,その属する名詞類のそのままの所有形容詞を用いると,「敵対」や「あわれみ」「軽べつ」など特殊な意味をもたせることがある.
kilema chake「彼のところのあの身体障害者」
jitu letu「私たちのところのあのでかいやつ」

6.5.特殊な「人」を表す名詞につけられる所有形容詞の短縮形

ある種の「人」を意味する名詞に対しては,所有形容詞が短縮されて,接辞として名詞に付着することができる.このような名詞は「家族」や「仲間」を意味するものに限られる.各人称によって短縮形が違うので,mwenzi「仲間」と baba「父」を例にとってそれらを示すと次のようになる.
所 有
形容詞
mwenzi
「仲間」
wenzi
「仲間たち」
baba
「父」
baba, mababa
「父たち」

-angu mwenzi wangu
mwenzangu
私の仲間
wenzi wangu
wenzangu
私の仲間たち
baba yangu
babangu
私の父
baba zangu
mababa zangu
私の父たち

-etu mwenzi wet
mwenzetu
私たちの仲
wenzi wetu
wenzetu
私たちの仲間た
baba yetu
私たちの父
baba zetu
mababa zetu
私たちの父た
-ako mwenzi wak
mwenzako
mwenzio
あなたの仲
wenzi wako
wenzako
wenzio
あなたの仲間た
baba yako
babako
あなたの父
baba zako
mababa zako
あなたの父た
-enu mwenzi wenu
mwenzenu
あなたたちの
仲間
wenzi wenu
wenzenu
あなたたちの仲の
間たち
baba yenu
あなたたちの
父たち
baba zenu
mababa zenu
あなたたちの父
たち
-ake mwenzi wak
mwenzake
mwenziye
彼(女)の仲
wenzi wake
wenzake
wenziye
彼(女)の仲間た
baba yake
babake
彼(女)の父
baba zake
mababa zake
彼(女)の父た
-enu mwenzi wao
mwenzao
彼(女)たち
仲間
wenzi wao
wenzao
彼(女)たちの仲間
たち
baba yao
彼(女)の父た
baba zao
mababa zao
彼(女)たちの父
たち
mwana/wana「むすこ,娘」,bwana/bwana,mabwana「主人」は mwenzi/wenzi「仲間」と同じ変化をする.binti/mabinti,binti「娘」は bintio/mabintio,bintio「あなたの娘(たち)」,bintiye/mabintiye,bintiye「彼(女)の娘(たち)」の形が使われる。
mwanangu「私の娘」,wanake,wanaye「彼女の子どもたち」,bwanao「彼らの主人」
mama「母」,dada「姉」,kaka「兄」などは baba「父」と同じ変化をする.ただし mamaなどの複数は単数と同じ形である.
mamangu「私の母」,dadako「あなたの姉」,kakake「彼(女)の兄」

6.6.場所を表す接尾辞 -ni

mahali 以外の名詞が場所を示すとき,それが場所を表すことを明示するための接尾辞 -ni をつけることができる.このような語は「〜へ,〜で」のような副詞的な意味を持って動詞とともに用いられる.「副詞」とは,動詞や形容詞を修飾して,その動作がどんな状況で起こっているか,ようすの程度がどうであるかなどを表すことばをいう.
bustani「公園」, bustanini「公園で,公園に」
Watoto wanacheza bustanini.「子どもたちが公園で遊んでる.」
jiko 「台所」,jikoni「台所へ,台所で」
Hakuna vyakula jikoni.「台所に食料がない.」
移動を表す動詞 kwenda「行く」,kuja「来る」などの目的語にも,場所を表す接辞がよくつけられる.
kazi「仕事」, kazini「仕事(場)へ,仕事(場)で」
Ninakwenda kazini.「私は仕事(場)に行く.」

6.7.場所を表す慣用句

場所を表す表現には次のようなものがある.これらはすべて所有接続詞 -a を使い,場所の位置関係を表す慣用句(決まりきった言い方)として用いられる.
juu ya 〜「〜の上に」, chini ya 〜「〜の下に」,
mbele ya 〜「〜の前に」, nyuma ya 〜「〜の後ろに」,kando ya 〜「〜のわきに」
ndani ya 〜「〜の内に」, nje ya 〜「〜の外に」,
kati ya 〜 na 〜「〜と〜の間に」, katikati ya 〜 na 〜「〜と〜の中間に」,
miongoni mwa 〜「〜の中で,〜にかこまれて」
Paka analia juu ya paa.「ネコが屋根の上でないてる.」
Anakaa ndani ya chumba.「彼は部屋の中にいる.」
Kuna maktaba ya taifa kando ya bunge.「国会議事堂のわきに国立図書館がある.」
Jumamosi ni kati ya Ijumaa na Jumapili.「土曜は金曜と日曜の間にある.」
Mtoto anafanya kazi miongoni mwa ng'ombe.「子どもは牛にかこまれて働いてる.」
これらの慣用句の中に使われている juu「上」,chini「下」,mbele「前」など,それ自体は第V類の名詞である.これらの語が単独で使われた場合も,副詞的な意味になることが多い.
Matokeo ya mtihani ni chini.「試験の結果は悪い.」
Anaenda mbele.「彼は先へ進んでいく.」
Anakungoja nje.「彼は外であなたをまってるよ.」
katika 〜「〜の中に」は,単独で後ろに名詞を補って使われる.これは,もともと慣用句 *kati kwa 〜 であったものが,短縮してできたものである.
Anaondoka katika darasani.「彼は教室の中から出て行く.」
mbali 「遠く」,karibu 「近く」では,所有接続辞 -a ではなく,接続詞 na を使って場所を示す慣用句を作る.
Ujapani ni mbali na Afrika ya Mashariki.「日本は東アフリカから遠い.」
Wanakuja karibu na wanyama.「彼女たちは動物の近くへ来る.」
また,かならずしも「場所」を表すものではないが,次のような慣用句も使われる.
mahali pa 〜「〜の代わりに」, badala ya 〜「〜の代わりに」,
kwa ajili ya 〜「〜のために」
Natumia basi mahali pa garimoshi.「私は列車の代わりにバスを使う.」
Wanatupa vitu badala ya pesa.「彼らは私たちに金の代わりに品物をくれる.」
Wake wanafanya kazi za nyumbani kwa ajili ya jamaa zao.
「奥さんたちは自分の家族のために家事をする.」

6.8.場所を表す所有形容詞の特別な用法

場所を表す接辞 ku につく所有形容詞には,それだけで「方向」や「場所」を表す副詞的な意味を持つ用法がある.このような用法は,kwenda「行く」,kuja「来る」,kukaa 「滞在する」など移動を表す動詞の後ろで用いられることが多い.
kwangu「私のところで(に)」, kwetu「私たちのところで(に)」
kwako「あなたのところで(に)」, kwenu「あなたたちのところで(に)」
kwake「彼(女)のところで(に)」, kwao「彼(女)たちのところで(に)」
Tunazuru kwao wajomba wetu.
「私たちはおじさんたちのところをたずねる.」
Askari wa polisi wanakuja kwangu.「警官が私のところ(家)へやって来る.」

6.9.majira/majira「季節」と気候について

東アフリカでは,赤道直下にあるウガンダ,ケニアをはじめとしてほとんどがいわゆる熱帯気候に属する.これらの国々では年間を通して気温の差がほとんどなく,したがって日本のような四季(春・夏・秋・冬)の区別はない.もともとスワヒリ語には四季を表すことばそのものが欠如していて,それらを言い表すには,たとえば夏は majira ya joto「暑い季節」,冬は majira ya baridi「寒い季節」のように説明しなければならない.しかし,これは東アフリカに季節差がまったく存在しないということではなく,日本のように明確な温度差による区別がないという意味である.
東アフリカではもっぱら雨量や風向きによって,年間の季節の移り変わりを知る.そのため,majira/majira「季節」という語も,日本の四季とはまったく種類の異なった季節を表すことばである.季節の区分は大きく、雨の少ない季節(乾季)と雨の多い季節(雨季)とに分けられる.乾季と雨季は降水量の明確な差となってあらわれるが,絶対的なものではない.乾季だからまったく雨が降らないとか,雨季には毎日雨が降るというものではない.雨量は季節差よりも地域差の方が大きい.乾燥した地域では雨季でも雨はあまり期待できないし,また逆に熱帯雨林気候に属する地域では年間を通して雨が多量に降るところもある.乾季と雨季の違いは,地域差を考慮した相対的な雨量の違いをあらわしたものである.
スワヒリ語では,このような季節区分をもとにいくつかの季節を表すことばが使われる.kiangazi/viangazi「暑い乾季」とは,北半球が冬のときに,北アフリカから吹く乾いた風によってもたらされる季節である.この風を kaskazi/kaskazi「暑く乾いた北風」という.この季節はだいたい11月から3月頃まで続き,年間を通してもっとも雨量が少なく,また平均気温がもっとも高くなる.
masika/masika「雨季」は,乾季の後に続く季節で,期間が一定していない.だいたい4月から5月頃までの間で,短いときは数週間,長いときは2カ月近くこの季節が続く.この時期はもっとも雨量が多くなり,乾燥した地域ではこの時期しかまとまった雨が期待できないところもある.雨量はかなり多く,ひどいときには各地で gharika/gharika「洪水」が起こる.しかしまた,日本のカラ梅雨のように,雨がほとんど降らないで終わってしまうこともあるという.比較的乾燥地の多い東アフリカでは,この時期が農業にとってもっとも重要な季節とされている.
雨季と乾季の間にある6月から10月にかけては,降水量は雨季と乾季の中間的な量で推移する.南部アフリカからの涼しい風が吹いて,気温は7月と8月が一番低くなる.この季節は kipupwe/vipupwe「涼しい季節」と呼ばれる.内陸部ではくもりの日が多く,霧のようにこまかい雨が降る.この時期を一番暑い1月と2月に比較すると,平均気温で5度くらいの差がある.また,10月頃には vuli/vuli「小雨季」と呼ばれる短い雨季がある.乾季に入る前のこの時期に多くの農作物を収穫する.
東アフリカでは,緯度による気候の違いはみられない.赤道の北側か南側かということもまったく季節の変化には影響しない.地域による気候の差はもっぱらその地形によるものである.気候区分は大きく分けて海岸地域と内陸部に分けられ,内陸部はさらにその標高によって大きく気候が変化する.
pwani/pwani「海岸地域」では年間を通して高温多湿で,平均気温は30度前後である.雨量は少ないが比較的安定しており,農業は熱帯性の果実栽培などが中心になる.ダルエスサラーム,モンバサなど古くからの大都市も多く,東アフリカとしては人口が集中した地域に属する.
内陸部ではこれに対して,気温も雨量も地域によってさまざまである.東アフリカには5千メートルを越える Kilima Njaro「キリマンジャロ」火山のような高山がいくつかあり,そのふもとには数百キロにわたって高原が広がっている.標高は千メートルから三千メートルで,高地特有の温暖な気候地帯となっている.このような地域では,赤道直下とはいっても年間平均気温がだいたい15度〜25度で,温帯から亜熱帯気候にかけてのさまざまな農業が行われている.Ziwa Viktoria「ビクトリア湖」周辺から Bonde la Ufa「大地溝帯」にいたる地域は雨量も多く,東アフリカの一大穀倉地帯になっている.比較的雨量の少ない地域は,savana/savana「サバナ」と呼ばれる大草原地帯を形成し,多くの野生動物が生息する.ウガンダでは国土の大半,タンザニア,ケニアでもかなりの面積がそのような地域をしめる.しかしまた一方,内陸北部や低地では乾燥がよりいっそう進み,日中の最高気温が45度に達するような jangwa/majangwa「砂漠」地帯もある.ただし,ここでいう砂漠は北アフリカの砂漠とは違って,植物がまったくはえない不毛の地という意味ではかならずしもない.たいていはサボテン類,アカシアなど乾燥に強い植物がまばらにみられる「半砂漠」のことをさしている.ケニアでは国土の約3分の1がそのような半砂漠地帯である.