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第9章 独立時制,単音節動詞 kuwa

9.1.独立時制の種類

「独立時制」とは,主辞をともなわずに「時制辞+動詞語幹」という形だけで独立して使われるものをいう.この時制では人称による変化がない.いつも固定した時制辞がどの人称に対しても用いられる.独立時制に属するものとしては,不定時制(「〜すること」のように動詞を名詞的に使う),習慣時制(「よく〜する」という習慣的な動作を示す),命令時制(「〜しなさい」と命令を表す)」がある.これらの独立時制に対して,現在,普遍,過去,完了,未来の各時制を一般時制と呼ぶ.
不定,習慣,命令の各時制は,特定の時間を示すものというよりは,動詞のはたらきを変化させるものである.しかし,スワヒリ語ではこのような場合でも,一般時制でみたのと同じような接辞の働きによって,動詞の用法を変えるのである.次に kupata「得る」とkuhusu「関係する」を例にとって,それぞれの独立時制の接辞をまとめて示す.
時制 時制辞 pata「得る」 husu「関係する」
時+動 時+目+動 時+動 時+目+動動
不定 肯定 ku kupata
得ること
kuipata
それを得るこ
kuhusu
関係すること
kuihusu
それに関係する
こと
否定 kuto kutopata
kutokupata
得ないこと
kutoipata
kutokuipata
それを得ない
こと
kutohusu
kutokuhusu
関係しないこ
kutoihusu
kutokuihusu
それに関係しな
いこと
習慣 肯定 hu hupata
しばしば得る
huipata
しばしばそれ
を得る
huhusu
しばしば関係
する
huihusu
しばしばそれに
関係する
命令 単数 pata
得ろ
ipate
それを得ろ
husu
関係しろ
ihusu
それに関係し
複数 pateni
得ろ
ipateni
それを得ろ
husuni
関係しろ
ihusuni
それに関係し

9.2.不定時制

不定時制は,動詞語幹の前に,肯定では ku,否定では kuto(または kutoku)をつけた形で表される.名詞語幹の前に不定時制接辞 ku のついた形を不定形と呼び,その語が動詞であることを示すもっとも一般的な形として使われる.
不定時制は名詞的な働きをし,「〜すること」のような意味を持つ.文の主語,あるいは補語として用いられる.
Kuangalia ni kuamini.「見ることは信じることだ(百聞は一見にしかず).」
Kutoangalia ni kutoamini.「見ないことは信じないことだ(見ずには信じがたい).」
Kusafiri ni kujifunza.「旅行することは勉強することだ.」
Kutofanya ni kutojua. 「しないことは知らないことだ.」
不定時制は目的語としても用いられる.ある種の動詞の後ろにおかれた不定時制は,その動作の直接の対象となる.このような動詞では,次に示すように慣用的な意味用法を持つものが多い.目的語の動詞を kufanya「する,つくる」として例を示す.
kupenda「好む」,kupenda kufanya 〜「〜することを好む,〜したい」
kutaka「欲する」,kutaka kufanya 〜「〜することを欲する,〜したい」
kujaribu「試みる」,kujaribu kufanya 〜「〜することを試みる,〜しようとする」
kupata「得る」,kupata kufanya 〜「〜することになる」
kuweza「できる」,kuweza kufanya 〜「〜することができる」
kujua「知る」,kujua kufanya 〜「〜することを知っている,〜ができる」
Wanafunzi watajaribu kuhesabu.「学生たちは計算しようとするだろう.」
Nataka kununua gari. 「わたしは車が買いたい.」
Wewe unaweza kuogelea? 「あなたは泳げますか.」
Sisi twajua kusoma na kuandika.「わたしたちは読み書きを知ってる.」
目的語として用いられる不定時制の中には,動作の目的として「〜するために」の意味を持つものがある.
kwenda「行く」,kwenda kufanya 〜「〜するために行く,〜しに行く」
kuja「来る」,kuja kufanya 〜「〜するために来る,〜しに来る」
kuondoka「でかける」,kuondoka kufanya 〜「〜するためにでかける」
Amekuja kukuona wewe.「彼女はあなたに会いに来た.」
Tutakwenda mjini kuzuru kwake.「わたしたちは彼のところをたずねに町へ行きます.」
このような意味では,副詞の ili「〜するために」を不定時制の前に補うことが多い.
Wanaondoka ili kununua vitu.「彼らは買物にでかけます.」
不定時制はまた他の語句の修飾語として用いられる.
Baba alinifundisha kulima na kuwinda.「父はわたしに農耕や狩猟を教えた.」
Tulimwambia kutovunja vitu. 「わたしたちは彼に物をこわさないように言った.」
Wataitaka kompyuta kujibu maswali yao.
「彼らはコンピュータが彼らの質問に答えるのを期待するだろう.」
文章体の表現では,「〜しながら,〜して」の意味で,文全体を修飾する使い方もある.
Kuendelea kazi za biashara, alijifunza masomo ya muziki.
「商売を続けながら,彼女は音楽の勉強をした.」
上のような文では,不定時制の動詞と他との間を句読点[,]で区切る.また,不定時制形は文の先頭においても,後ろにおいてもよい.
「〜して〜する」のように動作を2つ以上つなげるときは,接続詞 na 「そして」を用い,その後ろには動詞の不定時制がくる.
Alinunua ndizi na kuzila.「彼女はバナナを買って食べた.」
また,不定時制そのものを名詞類の1種とみなして,時制時 ku を名詞接辞のように扱うことがある.この場合の ku は,第Z類接辞の ku と同じ用法になる.
Kuimba kunatufurahisha.「歌うことはわたしたちをよろこばせる.」

9.3.習慣時制

習慣時制は,文中で一般時制の動詞と同じような働きをするが,主語の人称による変化を起こさず,いつも hu +動詞語幹,という形が統一的に使われる.この時制は「いつも(習慣的に)〜する,一般に〜だ」という意味で,一般的な真理を表したり,習慣的,継続的な動作・状況を示すときに用いられる.習慣時制には肯定の形しかないので,否定の意味には他の時制を使わなければならない.
Ndege huruka.「鳥が飛ぶ.」 Hulala usiku.「夜は寝るものだ.」
Sisi husahau kazi za nyumbani. 「わたしたちはいつも宿題を忘れる.」
Wanyama huogopa moto. 「動物は一般に火を恐れる.」
9.4.命令時制

命令時制は2人称(あなた,あなたたち)に対する命令「〜しなさい,〜してください」を意味するときに用いられる.この時制は主語や主辞を省略した形でのみあらわれる.スワヒリ語では「〜しなさい」も「〜してください」も区別がなく,依頼や願いの文も命令時制を用いて言い表すことができる.
命令時制は特別な時制辞を持たない.2人称単数に対する命令は動詞語幹がそのまま使われ,2人称複数に対する命令はその後ろに複数語尾 ni を接着させる.ただし,単数と複数の使い分けは厳密ではなく,単数の形を複数にも適用してかまわない.命令時制の前に主語(人称代名詞)を補ってもよい.この場合,主語がしばしば後置される.
Kimbia.「(単数に対して)走れ.」 Kimbieni.「(複数に対して)走れ.」
Amini.「(単数に対して)信じろ.」 Aminini.「(複数に対して)信じろ.」
Simama wewe.「あなたは立ちなさい.」 Vaa nguo.「服を着ろ.」
Sema maneno.「ことばを話せ.」 Wewe fumba mlango.「あなたはドアをしめろ.」
Endelea ninyi.「あなたたちは続けなさい.」
動詞語幹の語尾が母音 a で終わる動詞では,目的辞をともなうとき動詞語幹の母音 a を時制接尾辞 e に変える.それ以外の動詞では無変化である.
Nionyeshe.(単数) Nionyesheni.(複数)「わたしに見せて.」
Kitupe. (単数) Kitupeni. (複数)「それをすてろ.」
Msaidie.「彼女を助けて.」 Ipeleke mizigo.「荷物を送れ.」

9.5.単音節動詞の独立時制

単音節動詞と kwenda「行く」,kwisha「終わる」では,独立時制の形がやや違った変化をする.それはやはり単音節ということからおこる言いにくさをなくすために,いくつかの時制で不定時制接辞の ku を補った形が動詞語幹として使われるからである.また,命令時制で不規則な形を持つものもある.たとえば kula「食べる」と kwenda「行く」を例にとって変化のようすを示すと次のようになる.
時制 時制辞 la「食べる」 enda「行く」
時+動 時+目+動 時+動 時+目+動
不定 肯定 ku kula
食べること
kuila
それを食べる
こと
kwenda
行くこと
kuienda
そこに行くこ
否定 kuto kutokula
食べないこと
kutokuila
それを食べな
いこと
kutokwenda
kutoenda
行かないこ
kutokuienda
kutoienda
そこに行かな
いこと
習慣 肯定 hu hula
よく食べる
huila
よくそれを食
べる
huenda
よく行く
huienda
よくそこに行
命令 単数 kula
食べろ
ile
それを食べ
nenda
enda
行け
iende
そこに行け
複数 kuleni
食べろ
ileni
それを食べ
nendeni
endeni
行け
iendeni
そこに行け
上の例で,実際には kwenda「行く」が目的辞をとることはほとんどない.また,kwenda の命令時制は不規則変化で,nenda「行け(単数に対して)」,nendeni「行け(複数に対して)」となる.ただし,動詞語幹をそのままとって単数命令形を enda(kwenda),複数命令形を endeni(kwendeni)としてもよい.この他に語頭の母音を重ねた enenda(単数命令),enendeni(複数命令)という形もあり,意味を強めるときに使われる.
単音節動詞 kuja「来る」も命令時制は不規則変化を起こし,njoo「(単数に対して)来い」,njoni,njooni「(複数に対して)来い」となる.これらもまた,規則変化形を使って kuja(単数命令),kujeni(複数命令)としてもよい.
Wasafiri walitaka kwenda Misri.「旅行者たちはエジプトへ行きたかった.」
Siogopi kufa baharini.「わたしは海で死ぬことを恐れない.」
Watoto hunywa maziwa.「子どもたちはよくミルクを飲む.」
Wanafunzi huyataka masomo kwisha kwa haraka.
「学生たちはたいてい学業がはやく終わってほしいものだ.」
Kula chakula.「食事をしなさい.」 Kuleni miwa.「さとうきびを食べろ.」
Nenda shule.「学校へ行け.」 Njoni Ujapani.「日本へ来てください.」
9.6.単音節動詞 kuwa の用法

単音節動詞 kuwa「〜になる,〜である」は,意味的にけい辞と共通したものを持っているため,けい辞では表せない時制に対してけい辞に代わって用いられる.本来は別の動詞だった古い動詞の *li も,この単音節動詞 kuwa と同じ動詞として分類することが多い.そのためにいくつかの時制で形がだぶっているが,現代スワヒリ語では,現在時制,普遍時制では *li から派生した言い方を,それ以外の時制では kuwa を用いるのが一般的である.次にその変化の様子を示す.
時制 時制辞 wa, *li「〜になる,〜である」
(主辞)+動詞 主辞+関係辞+動詞
現在 肯定 na ninakuwa
わたしは〜
ni
〜だ
ninayekuwa
〜であるわた
普遍 肯定 a nawa
nakuwa
わたしは〜
ni, ndimi
(わたしは)〜
nawaye
nakuwaye
〜であるわた
niliye
〜であるわた
否定 -i siwi
わたしは
〜じゃない
si, simi
(わたしは)
〜じゃない
nisiyekuwa
siwaye
〜じゃないわた
nisiye
〜じゃないわた

過去 肯定 li nilikuwa
わたしは
〜だった
niliyekuwa
〜だった私
否定 ku sikuwa
わたしは〜じ
ゃなかった
完了 肯定 me nimekuwa
わたしは
〜になった
否定 ja sijawa
sijakuwa
わたしはまだ
〜じゃない
未来 肯定 ta nitakuwa
わたしは〜
になるだろ
nitakayekuwa
nitayekuwa
〜になるだろ
わたし
否定 ta sitakuwa
わたしは〜に
ならないだろ

しかし以上のうち,nawa, nakuwa, nawaye, nakuwaye, siwaye, siwi などはほとんど使われることはない.また,ninakuwa が単独の文で「わたしは〜だ」を意味するときは,けい辞ni を用いるのが通常の言いかたである.ninakuwa が使われるときは,「わたしはいま〜になろうとしている」のような意味になることがおおい.
Anakuwa daktari.「彼は医者になろうとしている.」
yeye anayekuwa daktari「医者になろうとしている彼」
Hawawi (Wao si) askari.「彼らは兵士(警官)じゃない.」
wasiokuwa askari「兵士(警官)じゃない彼ら」
Kiti kilikuwa mbao.「イスは木板だった.」 kiti kilichokuwa mbao「木板だったイス」
Yai halijakuwa kifaranga.「たまごはまだひよこじゃない.」
Patakuwa afisi.「ここは事務所になる.」 patapokuwa afisi「事務所になるところ」
独立時制では,kuwa だけが形をつくり,次のようになる.
不定時制・肯定形(時制辞 ku) kuwa「〜になること」
不定時制・否定形(時制辞 kuto) kutokuwa「〜にならないこと」
習慣時制・肯定形(時制辞 hu) huwa「いつも〜である」
命令時制・単数形(時制辞なし) kuwa「〜になれ」
命令時制・複数形(複数接尾辞 -ni) kuweni「〜になれ」
このうち,命令時制はほとんど使われない.実際には「接続時制」によって命令を表すのが普通である.

9.7.単音節動詞 kuwa に接続詞 na のついた形

「所有」などを示す na を「過去」「未来」「完了」などの時制にあわせるには,動詞kuwa「〜になる」と組みあわせて使う.それぞれの形は次のようになる.ここでは1人称単数を例にとって示す.他の人称でも同じようにつくられる.
普遍時制・肯定形 nina「わたしは持っている」
関係辞つき niliye na「持っているところのわたし」
普遍時制・否定形 sina「わたしは持ってない」
関係辞つき nisiye na「持ってないところのわたし」
過去時制・肯定形 nilikuwa na「わたしは持っていた」
関係辞つき niliyekuwa na「持っていたところのわたし」
過去時制・否定形 sikuwa na「わたしは持ってなかった」
関係辞つき niliyekuwa sina「持ってなかったところのわたし」
完了時制・肯定形 nimekuwa na「わたしは持ってしまった」
完了時制・否定形 sijakuwa na「わたしはまだ持ってない」
未来時制・肯定形 nitakuwa na「わたしは持っているだろう」
関係辞つき nitakayekuwa na「持っているだろうところのわたし」
未来時制・否定形 sitakuwa na「わたしは持ってないだろう」
関係辞つき nitakayekuwa sina「持ってないだろうところのわたし」
以上のうち,関係辞のついた否定形はあまり用いられない.
Moto una joto.「火は熱をもつ.」 moto ulio na joto「熱をもつ火」
Miwa haina maua.「さとうきびは花を持たない.」
miwa isiyo na maua「花を持たないさとうきび」
Nguo hazikuwa na uchafu.「服は汚れてなかった.」
nguo zilizokuwa hazina uchafu「汚れてなかった服」
Majani hayajakuwa na mvua.「草にはまだ雨がない.」
majani ambayo hayajakuwa na mvua.「まだ雨がない草」
Hakutakuwa na uwanja wa ndege.「そこに飛行場はできないだろう.」
kutakakokuwa hakuna uwanja wa ndege.「飛行場ができないところ」
独立時制では,kuwa だけが形をつくり,次のようになる.
不定時制・肯定形(時制辞 ku) kuwa na 「〜を持つこと」
不定時制・否定形(時制辞 kuto) kutokuwa na「〜を持たないこと」
習慣時制・肯定形(時制辞 hu) huwa na 「いつも〜を持つ」
命令時制・単数形(時制辞なし) kuwa na 「〜を持て」
命令時制・複数形(後接複数接辞 -ni) kuweni na 「〜を持て」
このうち,命令時制はほとんど使われない.実際には「接続時制」によって命令を表すのが普通である.
Kuwa au kutokuwa, hiyo ni swali.
「いるべきだろうかいないべきだろうか、それが問題だ。」

9.8.単音節動詞 kuwa を用いた複合時制

単音節動詞 kuwa「〜になる,〜である」は,一般時制の2つの時制を組み合わせた複合時制を作ることができる.この場合には kuwa の意味は強調されず,単に時制を複合させるためだけの働きをすることが多い.複合時制には次のようなものがある.
(1)過去現在時制 ( kuwa の過去時制 + 現在時制の動詞)
「〜していた」のように,「過去における動作の継続」を意味する.
Nilikuwa ninasoma kitabu.「わたしは本を読んでいるところだった.」
Sikuwa ninasoma kitabu.「わたしは本を読んでいなかった.」
(2)未来現在時制 ( kuwa の未来時制 + 現在時制の動詞)
「〜しているだろう」のように,「未来における動作の継続」を意味する.
Nitakuwa ninasoma kitabu.「わたしは本を読んでいるだろう.」
Sitakuwa ninasoma kitabu.「わたしは本を読んでいないだろう.」
(3)過去完了時制 ( kuwa の過去時制 + 完了時制の動詞)
「〜してしまっていた」のように,「過去における動作の完了」を意味する.
Nilikuwa nimesoma kitabu.「わたしは本を読んでしまっていた.」
Sikuwa nimesoma kitabu.「わたしはまだ本を読んでなかった.」
Nilikuwa sijasoma kitabu.「わたしはまだ本を読んでなかった.」
(4)未来完了時制 ( kuwa の未来時制 + 完了時制の動詞)
「〜してしまっているだろう」のように,「未来における動作の完了」を意味する.
Nitakuwa nimesoma kitabu.「わたしは本を読んでしまっているだろう.」
Sitakuwa nimesoma kitabu.「わたしは本を読んでしまっていないだろう.」
Nitakuwa sijasoma kitabu.「わたしは本を読んでしまっていないだろう.」